2020/09/27 クリニック
上田市内でのサルモネラ食中毒発生について
9月12~13日にアリオ上田店の催事スペースで販売された「うなぎ錦糸弁当」によるサルモネラ食中毒が発生しました。9月13日から、同じお弁当を食べた21グループ(家族)60名中50名が下痢、腹痛、発熱を発症し、長野保健所の調査によりサルモネラ属菌による集団食中毒と断定されました。
当クリニックにも9月14日に発熱と腹痛で受診された母子が帰宅後頻回の下痢になり翌日再診され、感染性腸炎と考えて培養検査を提出した上で治療を行いました。9月16日にサルモネラ属菌が検出されたとの報告があり、他にも同様な方が出ているとのお話もあり、上田保健所に届出をいたしました。その後保健所の調査でも同じくサルモネラが検出され、結局市内を中心に45名が19医療機関を受診し、うち4名の方が入院されました。
症状としては、病原性大腸菌やカンピロバクターなどと同様に強い腹痛を伴う頻回の下痢(いわゆる渋り腹)、血便、発熱が特徴ですが、サルモネラでは特に発熱が続くことが多く、小児や高齢者では時として重症化して菌血症を起こしたり、稀ではありますが死亡例も見られます。
治療は乳酸菌製剤の服用や症状により補液を行い、必要最小限の期間抗生剤の服用を行います。いわゆる下痢止め(止痢剤)の類は、細菌や毒素の排泄を遅らせて悪化や合併症につながる恐れがあり、使ってはいけません。
サルモネラは他の菌に比べて排菌が長く続きやすいのも特徴です。抗生剤を必要以上に服用すると、かえって菌の陰性化が遅れることも知られています。全身状態が改善した後は、再検査で菌の陰性化が確認できるまで乳酸菌製剤の服用や手洗いの励行などを心がける必要があります。
サルモネラは主に哺乳類、鳥類、爬虫類が保菌しているとされますが、特に鶏卵を介した感染が多く見られます。昔から「ひび割れた卵は食べるな」と言われるのは、殻に付着したサルモネラが卵の中に入り込んで増殖している可能性があるからです。
- 卵は「生食用」を「賞味期限内」に使い切ってください。
- 生食なら食べる直前に割り、すぐに食べきるようにしてください。
- ”割り置き”は厳禁です(特に卵黄と卵白を撹拌した状態で)。
- オムレツや親子丼などの半熟の料理も、生食と同様です。
- うっかりしてヒビが入ってしまったら、すぐに十分に加熱してから食べてください。(中心温度:75℃/1分間の加熱で死滅します。)
- いつヒビが入ったかわからない卵は破棄してください。
- 殻は放置せずすぐにゴミ箱へ。
- 卵に触れた手は次の作業の前に手洗いしてください。
* サルモネラを含む感染性腸炎についての情報は特集記事「大腸菌等による感染性腸炎にご注意を!」をご覧ください。
* 卵へのサルモネラの汚染経路(殻の外に付着する場合と、内部に入り込んでいる場合があります)や流通過程での汚染防止対策、賞味期限の根拠などについては東邦微生物研究所「卵とサルモネラについて」(外部リンク)にわかりやすく解説されています。