2020/12/06 クリニック
子宮頸がん予防の人パピローマウイルス(HPV)ワクチンの定期接種について
つい最近、子宮頚がん予防のためのHPVワクチンの定期接種対象者のご家庭に、このワクチンが現在でも希望の方に公費で接種できることを周知するための通知が送られていることと思います。
子宮頚がんの原因となるヒトパピローマ(HPV)ウイルスの感染を予防できる「HPVワクチン」は、2009年から世界中で定期接種が行われており、接種開始後の年代の女性の将来の子宮頸がんの発生を大きく減らせることが期待されています。日本でも2013年4月から定期接種が導入されましたが、直後の6月に、接種後に慢性の痛みや運動機能の障害などの症状を訴える例が報告されたことを受けて、これらの症状とワクチンの因果関係を検証し安全性が確認できるまでの間、積極的な勧奨が中止されています。その後「健康被害」についてのマスコミの報道の影響もあり、接種率は1%未満(0.3%)の状態が現在も続いています。
しかし、慢性の痛みや運動機能の障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは「機能性身体症状」と考えられるとの見解が発表されています。また、平成28年12月の全国疫学調査の結果では、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数存在し、「多様な症状」がHPVワクチン接種後に特有の症状ではないことが示され、さらに名古屋市で行われた大規模なアンケート調査でも「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がなかったことが示されました。国際的にも日本と同様な問題が発生している国はなく、「日本だけの特殊な状態」についての批判も強まっています。
このような状況の中で、最近海外で高い有効性に関する報告や、大阪大学から勧奨中止により接種機会を逸した世代に将来子宮頚がんによる死者が4000人以上のなるとの推計が報告された一方で、現在接種対象者に子宮頚がんワクチンが定期接種であることや期待される効果さえほとんど認知されていない状況になっていることに危機感を持った厚生労働省が、ようやく重い腰を上げて今回の通知に至ったものと思われます。
当クリニックでは、HPVワクチンはぜひ受けておくべきワクチンだと考えています。今般の通知をきっかけに接種に是非についてご相談を受ける機会が増えたことから、このホームページ上でも定期接種として受けられることをお知らせいたします。
HPVワクチンの意義、2種類あるHPVワクチンの特徴、接種後の注意などについての詳しい説明は「小学校6年~高校1年相当 女の子と保護者の方へ大切なお知らせ」(詳細版)をごらんください。さらにお尋ねになりたいことのある方は、直接ご相談ください。