堀こどもクリニック

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2021/08/18 子どもと新型コロナウイルス感染症

小児の新型コロナウイルス感染症アップデート 3 
 乳幼児のマスク着用の考え方(更新) 
 最近の市内の感染症の動向

小児の新型コロナウイルス感染症に関するアップデート(3)

前回のアップデート2から半年あまりが経過しました。第四波から現在拡大中の第五波へと感染の拡大に伴い小児の新型コロナウイルス感染症の様相にも変化が見られるため、最近の知見をまとめてみました。

  • ( 2021/5/20 JAMA:アメリカ医師会雑誌 )スウェーデン国内の2020年3月11日から2021年1月31日の間に出生した全生産児の92%(8万8159例、女児49.0%)を対象とした調査結果で、2323例(1.6%)がコロナウイルス陽性の母親から出生し、早産児(妊娠期間37週未満)の割合は、陽性の母親の乳児で8.8%、対照乳児で5.5%だった。死亡率(0.30% vs 同2.55)、退院時の母乳哺育率(94.4%vs 95.1%)、新生児医療の入院期間には差がなかった。陽性の母親から出生した乳児のうち21例(0.90%)で新生児期に検査が陽性となったが、そのうち12例は新生児期に合併症はなく、残る9例は何らかの診断を受けたがコロナウイルスとの関連性は不明で、先天性肺炎は1例もなかった。
  • (2021/2/24 日本小児科学会 ) 2021年2月23日時点で、国内において10歳未満の小児は約1万人、10歳代の小児は約2万人が新型コロナウイルス感染症にかかっていますが、亡くなられた方の報告はありません。その一方で、欧米を中心とした諸外国では一定の割合で重症化する小児の患者が報告され、国内においても少数ながら重症化した小児がいることが明らかになりました。
  • (2021/3/22 日本小児科学会 ) 日本では、2020 年 8 月 31 日までに31 施設で計 52 人の新型コ ロナウイルス感染の妊婦から新生児 52 人が出生し、 そのうち,1 人(1.9%)の新生児で出生後の新型コロナ ウイルス検査が陽性であった。
  • (2021/4/14 日本小児科学会 ) 「乳幼児のマスク着用の考え方について」が更新されましたが、引き続き効果はあまり期待できず、危険性が高まるので、注意をするようにとなっています。(下記に詳細)
  • (2021/5/20 日本小児科学会 ) 新型コロナウイルス感染症の流行第4波(2021年3月以降)では、COVID-19新規患者数が増加しているが、小児患者の割合はわずかな増加に留まり、変異ウイルスに感染した場合も多くが無症状から軽症で経過している。また小児の患者の大部分は成人患者からの感染であり、第4波に入ってからも変化していない。(2021年5月5日時点で、総感染者数602,190人のうち10歳未満は18,642人(3.1%)、10-19歳は42,333人(7.0%)と報告されている。)
  • (2021/5/31) ファイザー社製の新型コロナワクチンの12歳以上の小児への接種が承認されました。その後7月19日、モデルナ社製のコロナワクチンも12歳以上への接種が承認されました。
  • (2021/6/16 日本小児科学会 ) 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」:子どもを新型コロナウイルス感染から守るためには、周囲の成人(子どもに関わる業務従事者等)への新型コロナワクチン接種が重要です。
  • (2021/6/16 日本小児科医会 ) 「12 歳以上の小児への新型コロナウイルスワクチン接種についての提言」:12 歳以上の小児を対象とした新型コロナウイルスワクチン接種にあたっては、 保護者や本人への丁寧な対応が可能な個別接種を基本とし、集団接種を行う場合は、 リスクをできる限り軽減するための対策と対応を十分に整備したうえで実施すること。
  • (2021/6/17 日本産婦人科学会他 ) 「妊婦さんへの接種」については、すでに多くの接種経験のある海外の妊婦に対する ワクチン接種に関する情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、 お母さんや赤ちゃんに何らかの重篤な合併症が発生したとする報告もありません。したがって日本においても、希 望する妊婦さんはワクチンを接種することができます。( 6/13付のクリニックHPの新着情報「新型コロナワクチンQ&A」をご覧ください。)
  • (2021/8/16 日本経済新聞 ) 厚生労働省の集計をもとに年代別のコロナ感染状況を分析したところ、8月5~11日は10代未満が5422人、10代が1万826人と、いずれも最多となり、「第4波」のピーク時(5月13~19日)から3倍程度増えた。全世代に占める割合もそれぞれ5.8%、11.5%と、これまでで最も高くなった。
  • (2021/8/17 日本産婦人科学会他 )「妊婦さんへの接種」について、最新の知見に基づき、初期からでも時期を問わず接種をお勧めします。また妊婦の感染源の約8割を占める夫やパートナーへの接種をお願いします。

現在の第5波においては、感染の主体が感染力の強いデルタ株に置き換わったことと気の緩みも含めての人流増加も加わり、これまでにないスピードで感染が拡大しつつあります。特にワクチンの接種が進んでいない若い世代の感染増加により家族内感染の増加は顕著です。最近の陽性例の公表内容を見ていると、親の一人が感染すると数日後に濃厚接触者の夫婦、両親、子どもたちが次々に陽性となっています。それがこれまで少なかった小児の感染例の増加につながっているものと思われます。(昨年10/7時点まで〜今年5/5時点まで〜8月上旬の1週間で、10歳未満が2.3%〜3.1%〜5.8%、10歳代が5.1%〜7.0%〜11.5%)引き続き重症例は希ではあるものの、最近は小児でも酸素投与を必要とする中等症例が見られるようになってきました。これから夏休みが開けると、学校等を介しての感染拡大も増えるのではないかと危惧しています。そしてこの感染拡大を抑えるためには、ワクチン接種を遅滞なく進めることが最も重要であることに疑問の余地はありません。

この間ファイザー社製、モデルナ社製の新型コロナワクチンの12歳以上の小児への接種が承認され、すでに当クリニックでも高校3年生のほか、12〜13歳の基礎疾患のある子どもの接種も実施しています。今後上田市でも一般の方への予約可能のご案内が年齢順に拡大されますので、予約可能となったら躊躇せず機会を逃さずに接種を受けるようお願いいたします。

「乳幼児のマスク着用の考え方」が更新されました

昨年6月に公表された「乳幼児のマスク着用の考え方」について、2021年4月に更新されました。要旨は以下のとおりです。

乳幼児は、自ら息苦しさや体調不良を訴えることが難しく、自分でマスクを外すことも困難です。また、正しくマスクを着用することが難しいため、感染の広がりを予防する効果はあまり期待できません。むしろ、次のようなマスクによる危険性が考えられます。

  • 呼吸が苦しくなり、窒息の危険がある。
  • 嘔吐した場合にも、窒息する可能性がある。
  • 熱がこもり、熱中症のリスクが高まる。
  • 顔色、呼吸の状態など体調異変の発見が遅れる。

特に、2歳未満の子どもではこのような危険性が高まると考えます。

子どもがマスクを着用する場合は、いかなる年齢であっても、保護者や周りの大人が注意することが必要です。感染の広がりの予防はマスク着用だけではありません。保護者とともに集団との3密(密閉、密集、密接)を避け、人との距離(ソーシャル・ディスタンス)を保つことも大切です。

ベビー用等小さいマスクの型紙紹介、販売等がなされていますが、乳幼児へのマスク着用にはマスクの大きさにかかわらず上記の危険性があります。十分に留意しましよう。

上田市内の最近の感染症の動向と、令和3年6月時点での南半球のインフルエンザ流行状況

新型コロナとの同時流行が懸念されていた季節性インフルエンザですが、昨シーズンの流行はほぼゼロレベルでした。本年も6月になり冬を迎えている南半球では、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカなどで、インフルエンザ患者の報告がほとんどない状況とのことです。

昨年夏に流行が全く見られなかった手足口病やヘルパンギーナといった夏風邪は、この夏も極めて少なく、当クリニックでは1例も確認していません。その一方で、7月から2シーズンぶりにRSウイルス感染症が増加し、近くの保育園/幼稚園から1週間に10〜20名が来院することもありました。最近は市内各所に広がる一方で、同じように気管支炎症状が見られながらRSウイルスの検査が陰性の例も少なくなく、複数の風邪の地域的な流行があるようです。

この1年半、小児ではあらゆる感染症が非常に少ない状況が続いていましたので、このような状況は久しぶりです。生まれてから様々な感染症の流行を経験せず免疫のない乳幼児が増加しているので、一度流行が始まると心配です。

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