2025/06/07 小児科医からのヒントとトピックス
特集 百日咳(その3)トリビックによる母子免疫ワクチンの勧め
母子免疫ワクチンとしての、妊婦への三種混合ワクチン「トリビック」の接種について
米国から、乳児における百日咳の感染源は母が32%で最も多く, 次いで兄弟, 姉妹 (20%), 父(15%) という報告があります。一方、妊婦への百日咳含有ワクチン接種は妊婦本人が百日咳を予防し乳児への感染源とならないようにするとともに, 適切な時期の妊婦への接種が胎児への移行抗体に反映することが報告されたため、ここ10年余り妊婦へのワクチン接種を実施する国が増えています。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ベルギー、ブラジル、韓国などで、国により少し違いはありますが、妊娠ごとに在胎28〜36週前後の接種が推奨されています。
ただし、これらの国では、百日咳以外のジフテリア、破傷風の成分を成人向けに調整した成人用三種混合ワクチンが用いられていますが、日本では導入されていないため、今のところ従来小児用に用いられてきたワクチン(トリビック)が代替として用いられます。
最近厚生労働省研究班により、妊婦への DTaP(トリビック)皮下接種の安全性と乳児への百日咳に対する抗体移行が確認されたことから、妊婦への接種が勧められるようになりつつあります。本年4月には、日本産婦人科学会から、会員ならびに一般の方向けに「乳児の百日咳予防を目的とした百日咳ワクチンの母子免疫と医療従事者への接種について」とのお知らせも出されました。(https://www.jsog.or.jp/news/pdf/infection07.pdf)
今回の百日咳の流行は沈静化に向かいつつあるようですが、今後も以前より多いレベルでの発生は続くと思われます。重症化リスクが高くワクチン開始前の生後1〜2ヶ月の子どもの感染を少しでも防ぐために、当面小学校入学前と小学校6年生への「トリビック」による追加代替接種を普及させつつ、正式な母子免疫ワクチンの導入が期待されます。
現在妊娠中の方、今後妊娠の予定のある方は、ぜひ <妊娠毎に> かかりつけの産婦人科で三種混合ワクチンの接種について相談してみてください。