堀こどもクリニック

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2020/08/31 小児科待合室の皆さんへ

でべそ(臍ヘルニア)が気になる方へ

臍(さい)ヘルニアの圧迫固定療法について

 臍ヘルニアは、おへその部分の腹筋や腱のすきまが少し大きいために、泣いたりいきんだりした時に腸が脱出してしまう状態です。ピンポン球くらい大きくなることもあります。生後1~2ヶ月頃に目立つようになり、多くの場合生後数ヶ月から1~2才台までに自然に治ります。

 鼠径(そけい)ヘルニアでは嵌屯(かんとん)(脱出した腸が出口で締め付けられて戻らなくなり、放置すると血行障害で壊死に至る)を起こす可能性があるため原則として手術が行われるのに対して、臍ヘルニアでは嵌頓の危険はなく、自然治癒を待つのが一般的でした。もし2~3才以降も大きく膨隆していたら、ヘルニアの閉鎖手術とおへその形成手術の適応となります。一方で昔から「五円玉を貼付ける」民間療法も行われていましたが、絆創膏にかぶれて長く続けられない、脱出しないよう押さえることが困難、などの理由で医学的には意味のないこととされてきました。

 しかし最近は積極的な圧迫固定を行なうことにより、1~2ヶ月で治ることが多く、おへそのたるみやしわ(いわゆる”でべそ”)のような美容上の問題を残さずに済むという利点が明らかになっています。きっかけは傷や火傷の瘡傷面に使われる被覆材(創面を保護して治癒を早める)の進歩です。最近の被覆材はかぶれにくくそのまま入浴もできるので、綿球やスポンジで圧迫した上から被覆材で覆い、数日に一度貼り替えるだけで済みます。未だに「そこまでする必要はない…」といった意見もみられますが、当クリニックでは既に15年近く前から数多くの赤ちゃんへの治療を行なっています。

治療開始時の状態(生後2ヶ月12日)

 生後1ヶ月頃から膨隆し始め、約1ヶ月で写真のようにピンポン球くらいの大きさに膨隆するようになっていました。圧迫固定について説明し、了解を得て治療を行うことにしました。

圧迫固定した状態

 膨隆の大きさに合わせて用意した綿球をあてがって圧迫し、その上からテガダームという被覆材を貼って固定しました。ヘルニアが大きかったので、隙間ができないように貼るのにちょっと苦労しましたが、どうやらうまくいきました。このままお風呂に入っても体を洗っても大丈夫です。たいていは数日貼りっぱなしでも大丈夫ですが、人によっては赤くなったりかゆくなったりすることもあります。その場合は1~2日お休みして、きれいに洗ったり軟膏をつけたりして、改善を待ってまた再開します。

1ヶ月後の状態(生後3ヶ月12日)

 ちょうど1ヶ月を経過した日に来院しました。写真のようにあれだけ大きかったヘルニアが力を入れても膨隆せず、あったこともわからないくらいなりました。

 全ての例でこのようにうまくいくとは限りませんが、手間も少なく、生活上の支障も特にないことを考えれば試して損はないと思います。当クリニックでは多くの症例の経験にもとづき、個々の赤ちゃんの肌の状態に応じて被覆材の種類を変えたり、ヘルニア孔や膨隆の大きさに応じて圧迫する材料の種類や大きさを調整するなど柔軟な対応を行なっています。治療開始時期が早いほど治りも早い傾向があるので、臍ヘルニアに気づいた方、治療を希望される方は早めにご相談下さい。

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