堀こどもクリニック

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2020/08/31 小児科待合室の皆さんへ

熱性けいれんへの不安にお答えします!

熱性けいれんを過度に心配しないで下さい (熱性けいれんガイドライン2015から)

2015年に日本小児神経学会から、およそ18年ぶりに改訂された「熱性けいれん診療ガイドライン2015」が公表されました。100ページもある大作なので、以下に要旨だけをまとめてみました。

熱性けいれんとは、主に生後6~60か月までの乳幼児期に起こる、通常は38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)を指す。(明らかな発作の原因となる疾患やてんかんの既往のあるものは除外される。)ジアゼパム坐薬(ダイアップ坐薬®) による熱性けいれんの予防効果は高いものの、ふらふらして転んでけがをするなど副作用も存在し、ルーチンに使う必要はない。「遷延性発作(15分以上)の既往がある場合」または、下記のうち2つ以上を満たす発作が2回以上反復する場合に使用する。

  • 焦点性発作または24時間以内に反復 
  • 熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常・発達遅滞
  • 熱性けいれんまたはてんかんの家族歴
  • 生後12カ月未満
  • 発熱後1時間未満での発作
  • 38℃未満での発作

上記のような条件に該当しない短時間の「単純型熱性けいれん」による有害事象はなく(てんかん発症や認知機能に影響するとの根拠はなく、誤嚥等での死亡例の報告もない)、「今度起こしたらと?」心配する必要はありません。もちろん家族の不安の程度は様々なので、それを考慮の上で対応する必要はあり、心配な方はダイアップ座薬の適応などご相談下さい。

もしお子さんが熱性けいれんを起こした場合には、まず時間を確認し、衣服を緩め、けいれんの様子(目の向きは?四肢のけいれんは左右対称か?など)をよく観察して下さい。呼び起こそうとしたり、体を揺すったりしても意味はありません。数分以内におさまり、そのあとはいったん眠ってしまうことも多いので、あわてず落ち着くのを待ちましょう。それからかかりつけ医や初期救急センター等に連絡して観察したことを伝え、指示に従って受診して下さい。万一、5~10分のうちにおさまりそうにない時には、救急車を呼びましょう。

脳炎や脳症の心配は?

発熱時のけいれんに際しては、脳炎や脳症を心配される方も少なくありません。でも熱性けいれんなら、おさまったあと少したてば意識が戻りますので、お母さんがわかり、自分の意思で手足を動かし、普通の会話ができるようになれば心配はありません。(けいれんのあと眠ってしまった場合には、目が覚めた時に確認できれば大丈夫です。)

もし脳炎や脳症でけいれんを起こしたら、意識が戻らないまま断続してけいれんを繰り返す、目を開けてもお母さんを認識できない、普段ならわかるような言葉にも反応しない、お母さんの手やおもちゃを握ったり/嫌がり払ったりという動作ができない、というような状態になります。

熱性けいれんを起こしても、予防接種は受けられます!

ガイドラインでは、単純型熱性けいれんの既往のあるお子さんへの予防接種についても具体的に触れられています。

  • 当日の体調に留意すればすべての予防接種をすみやかに接種してよいが、個別にワクチンの有用性と起こり得る副反応,および具体的な対応策を事前に十分説明し,保護者に同意を得ておくように。
  • 初回の熱性けいれん後のワクチン接種までの経過観察期間には明らかなエビデンスはなく、長くとも 2 ~3 か月程度に留めておくように。ただしこの2~3ヶ月という期間についても特別なエビデンスはなく、主治医の判断で柔軟に変更(短縮)も可能である。

つまり、熱性けいれんを心配することなく、必要な時期に必要なワクチンを受けることが大切なのです。熱性けいれんの既往のある方で、ワクチンを受けることに不安のある方はいつでもご相談ください。

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