堀こどもクリニック

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2020/08/31 小児科待合室の皆さんへ

大腸菌等による感染性腸炎にご注意を!

8月上旬に上田市からのメール配信サービスを通じて、長野県下の「夏期食中毒注意報」発令の通知がありました。高温多湿な夏から秋の初めにかけての時期は病原性大腸菌など細菌感染による感染性腸炎(食中毒)の多い時期ですので、ご注意ください。

食中毒」の原因は?

大腸菌やカンピロバクターなど生の食肉を介した細菌性感染性腸炎のほか、給食などを介したノロウイルスによる食中毒、ブドウ球菌(手作りのあんこ製品など)やウェルシュ菌(作り置きのカレーなど)など感染ではなく付着した細菌が産生した毒素による食中毒もあります。

経路不明な散発例の感染性腸炎は日常的に見られます。当院でも病原性大腸菌の O(オー)01、O18、O25、O125、あるいはカンピロバクター、時にはサルモネラ、稀にはエドワードシエラという聞きなれない名前も… 毎年夏から秋にかけての時期に細菌性腸炎のお子さんを(時にご両親も)よく診ています。

症状の特徴は、発熱と強い腹痛と粘血便です!

細菌感染による腸炎を疑う状況で多いのは、何といっても粘血下痢です。嘔吐は通常みられず、年長児や大人では間欠的な強い腹痛も特徴です。高熱を伴うこともあります。ノロやロタのようなウイルス性胃腸炎では嘔吐から始まり、下痢は回数が多くても水様で、血便を伴うことはまずありません。幼児期では高熱や強い腹痛を訴えることは多くないので、頻回の下痢にイチゴジャムのような血便が少量でも見られれば、感染性腸炎を疑います。

病原性大腸菌感染症の粘血便

疑ったら最初に便の培養検査を!

疑った場合には必ず便の培養検査を行います。原因菌により、最初に検査を行っておかないと後の対応が厄介です。大腸菌ならベロ毒素を産生するかどうかの確認が必要、カンピロバクターでは抗生剤変更の可能性があり、サルモネラなら菌の排出が長く続くので「陰性化」の確認が必要となります。

血便が顕著な場合の注意は?

特に問題なのはベロ毒素を産生し、溶血性尿毒症性症候群という重篤な合併症の原因となるO157、O26、O111などの腸管出血性大腸菌です。典型例では本当に真っ赤な血性下痢が続きます。当院でも一例経験があり、そのお子さんは数日後に合併症を発症して入院となりましたが、幸い速やかに回復しました。見過ごすと大変なので、治療前の検査が不可欠です。また、検査結果が出るまで手洗い等の注意を厳重に行なっておく必要があります。

下痢止めは使ってはいけません!

培養検査の提出後、まずホスホマイシンという抗生剤を短期間服用します。たいていは結果が出るまでに症状は軽快します。下痢に対しての食事の注意などは小児急性胃腸炎と同じですので、そちらの記事を参考にしてください。(→ リンクできる?)いわゆる「下痢止め」と称する薬は細菌が産生する毒素の排泄を遅らせて合併症の危険性を高める可能性があり、使ってはいけません! (乳酸菌製剤は大丈夫です。)

予防上の注意は?

病原性大腸菌は主に牛などの哺乳動物の腸管に常在し、糞便に含まれる菌で汚染された肉類や生鮮食品を介して感染しますので、これらの扱いや調理には十分注意して下さい。手洗い不十分での哺乳のためか、「生ものは口にしない」はずの乳児での検出例さえあります! 大腸菌以外では、加熱不十分な鶏肉からのカンピロバクターもよく見られます。細菌感染による腸炎は確かに夏に多いものの、最近は一年を通じてみられるので涼しくなっても油断はしないでくださいね。

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