堀こどもクリニック

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2020/08/31 ワクチンを受けよう!

予防接種で防げる病気をよく知ろう! その2   麻疹、風疹、水痘、おたふくかぜ

麻疹 (はしか)

   空気感染で約10日の潜伏期の後発熱と上気道炎を起こし、少し遅れて特有な発疹を伴います。中耳炎や肺炎の合併がしばしば見られ、急性脳炎は約1000人に1人発生し致死率は約15%、約10万人に1人亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という致命的な中枢神経疾患が発生します。50年前には年間数千人の死亡例があり「ひ弱な子どもを淘汰する病気」でし た。ワクチンは1970年から導入、1978年から定期接種となり患者数は減少しました。

しかし接種率はずっと90%に及ばず、つい最近まで年間20万人もの患者発生と数10人の死亡が続き、「麻疹輸出国」という国際的な非難を浴びていました。2001年の大流行を契機に接種率向上のキャンペーンが、また2006年からMR(麻疹・風疹)ワクチンでの2回接種が導入されてようやく患者数は激減し、2015年3月にWHOから「麻疹排除状態」と認定されました。しかし米国、ドイツを始め「排除状態」の国でも流行国からの「輸入麻疹」の小規模な流行が繰り返しており、接種率の低下による再流行の危険性は常にあります。従って今後も接種率95%の維持が必要です。

麻疹の皮疹:融合傾向と色素沈着が見られる

風疹(三日ばしか)

 飛沫感染による発熱と発疹を伴う感染症で、潜伏期は2~3週間です。発熱と発疹は並行して見られますが、際立った特徴がなく溶連菌感染症や伝染性紅斑などと区別しにくい場合があります。まれに血小板減少性紫斑病や脳炎を合併します。問題は妊娠初期の初感染により先天性風疹症候群(先天性心疾患、難聴、白内障、網膜症など)が高率に発生することです。

確実な診断が困難なため「周囲での流行のない時の風疹の診断は原則としてつけず、予防接種をすすめるべき」です。もしかかっていてもワクチンは心配なく接種できますが、かかっていないのに診断を信じて接種せず、将来妊娠中にかかってしまったら取り返しがつきません。

国内でかつて5~10年ごとにみられた大きな流行は1992年を最後にワクチン普及のため遠のきました。しかし風疹ワクチンは1989年までは中学生女子だけ、1989年から MMR(麻疹・風疹・おたふくかぜ)ワクチンが導入されるも髄膜炎の発生で中止されてしまい、その後単独の風疹ワクチンが個別 接種で再開されるも接種率が低迷。ようやく2006年からMRワクチンの2回接種が導入され、さらにこの間の接種率の低下を補うために2008年から2012年度まで中学1年と高校3年への定期接種も行われました。

このような経過で30~50歳台の男性を中心に免疫のない人が増え、2004年に推定4万人の大流行、その後2010年の78例を底に、2013年はまた14357人という流行になり、先天性風疹症候群が1年半で 42例報告されました。

現在妊娠を希望する女性やその夫、家族に対してワクチン接種が勧められています。また2019年から3年計画で、1962〔昭和37〕年4月2日から1979〔昭和54〕年4月1日生まれの男性に対して原則無料で風疹の抗体検査・予防接種を実施する事業が現在進行中です。

風疹の皮疹:細かく融合傾向はない

水痘(みずぼうそう)

空気又は接触感染で約14日の潜伏期で発症します。日本では小児科定点からの報告だけで毎年20万人以上の発生があります。発熱を伴い全身の水疱を形成し、通常約1週間で痂皮化して治りますが、成人例では発熱、発疹ともひどく、合併症の頻度も多くなります。

ありふれた感染症という認識とは裏腹に、脳炎、肺炎、新生児水痘(致死率20~ 30%)、ライ症候群(アスピリンの併用による、致死率20~30%)、先天性水痘症候群、水疱部の細菌感染、帯状疱 疹の続発など様々な合併症がみられます。白血病の治療中など免疫不全状態の患者では重症化しやすく、時に致命的です。

水痘ワクチンは小児がん治療中の感染予防のために1974年に日本で開発され、その後世界中に普及しました。免疫抑制状態でも重症化しないよう弱毒化されているため有効率はやや低く、約20%では接種後の感染が見られますが、大抵は軽く済みます。既に欧米では2回の定期接種が普及しており、日本でも2014年10月から3歳未満への2回の定期接種が導入され、その後患者発生が減少しつつあります。

水痘の皮疹:水疱の一部におへそのようなくぼみが見られる

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

唾液を介しての空気または接触感染で、2~3週間の潜伏期で唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の腫脹や発熱が見ら れます。 年間患者数は推定50~100万人とされます。通常は1週間程度で軽快しますが、無菌性髄膜炎(無症状例も含 めると10%くらいとも)、睾丸炎(思春期以降の男性の20~30%、片側性が主だが両側性だと不妊症の原因とな る)、卵巣炎(成人女性の約7%)、難聴(最近数百人に1人という報告もあり、片側性だが永続的な障害、不顕性感染 でも起きうる!)や膵臓炎などの合併症があり、水痘同様成人例の方が重症です。

ワクチンは1967年に米国で導入さ れ、1980年代後半からMMR(麻疹、風疹、おたふくかぜ)ワクチンの2回接種が世界標準です。日本でも1989年に導入も、接種後の無菌性髄膜炎発生の増加のため1994年に中止されました。これが他の新規ワクチン導入の遅れにつながり「ワクチン後進国」になるきっかけとなりました。任意接種のため接種率はまだ30~40%と低迷していますが、新MMRワクチンの治験が進行中です。接種接種は麻疹・風疹混合ワクチンと同時期の1歳と5~6歳の2回接種が基本ですが、大人でも可能です。

おたふくかぜ:耳下腺、顎下腺が腫脹してあごの輪郭がわからなくなる

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