2020/08/31 ワクチンを受けよう!
予防接種で防げる病気をよく知ろう! その3 BCG、日本脳炎、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス
BCG(結核)
他とは異なり結核予防法に定められたワクチンです。未だ結核は集団発生も稀ではなく、年間2万人以上の発病者があります。小児では成人に比べて肺結核より重症な結核性髄膜炎や粟粒結核(血行性、リンパ行性に全身臓器に急速に 広がる)の頻度が高く、BCGはその予防に効果があります。(大人になってからの肺結核の予防ではなく、4~5歳 以降の接種適応はありません。)
2005年から乳児期のツ反抜きの直接接種となり、2013年から推奨期間が生後5~8 ヶ月に変更されました。満1歳を過ぎると任意接種となり、またツ反確認の上での接種となりますので、忘れずに接種を受けて下さい。
接種部位は上腕外側の中央です。針痕が残るため美容上の観点から肩の上の方に接種される場合がありますが、実は「肩に近いほどケロイド発生率が高くなるため避けること」とされています。接種1~2ヶ月で針痕部の発赤、化膿が見 られるのが普通です。
万一既に結核に感染していると通常より早く接種後数日でに接種部位の発赤、化膿などが出現します。これをコッホ反応と呼び、結核検診が必要かどうかを判断するために、速やかに小児科を受診してください。
日本脳炎
コガタアカイエカによりブタからヒトに媒介される日本脳炎ウイルスによる重篤な急性脳炎です。発症すると、高熱、意識障害、けいれんを起こし、死亡率は20~40%、生存しても高率に後遺症を残します。ただし不顕性感染が多く、発病は感染者の100~1000人に1人とされます。日本では1966年の2017人をピークにワクチン導入によ り減少し、1992年以降は高齢者を中心に年間10人以下、小児例の発生はほぼなくなりました。しかし子ブタの抗体調 査では毎年夏から秋にかけて西日本を中心にほぼ全国に流行が確認され、感染の危険性があります。また飼い犬から抗体が検出されたとの報告もあり、「近くにブタはいないから大丈夫」と安心はできません。
日本以外では東アジアから 南アジアにかけて年間数万人の発生があり、定期接種が行なわれている日本、韓国と台湾だけ(中国も減少中)流行が 阻止されています。2005年にはインド北部からネパールにかけて大流行し、1300人以上(大部分が小児)が死亡するという大惨事も発生しました。
マウスの脳を用いた旧ワクチンは、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)との因果関係が疑われたため2005年から勧奨が中止されました。その後接種率は激減し、2006年から2011年までに6例の小児例が発生しています。当時開発中だった 新ワクチンは2009年に導入され、2011年5月には 接種機会を逸した「特例対象者」(平成7年6月1日~平成19年4月1日の間に生まれた者)について20歳未満まで定期接種が可能となりました。母子手帳を見て、未接種欄があればぜひ接種を行なって下さい。なお標準接種年齢は3歳以上ですが、生後6ヶ月から定期接種可能です(接種量は半量の0.25ml)。東~東南アジア流行地への長期渡航時には事前の接種をご相談下さい。
なお日本小児科学会は、2016年2月に西日本など日本脳炎罹患リスクの高い地域に居住・滞在する児について、生後6カ月からのワクチン接種開始を推奨する見解を公表しました。 また、これまで北海道は「日本脳炎の予防接種を行う必要がない区域」と指定されていましたが、住民が道外や海外に行き来する機会が 増えていること等から、2016年4月1日から定期予防接種が開始されました。
ロタウイルス感染症
「冬期下痢症」や「白色便性下痢症」と呼ばれ、激しい下痢が特徴で、世界中では年間死亡者数60~70万人と言わ れています。国内では死亡例は少なく重症例も減少していますが、それでも年間約78000人の5歳以下の小児が入院しているとされます。
社会的な影響の大きいロタウイルスに対する経口生ワクチンは2006年に米国で承認され、既に世界中で導入されています。日本でも2011年に1価の「ロタリックス」(2回服用)、2012年には5価の「ロタテック」(3回服用)が発売されました。生ワクチンのため接種後4週間は他のワクチンは接種できないため、生後2ヶ月からヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンとの同時接種が必須となります。
ロタウイルスワクチンでは腸重積症発生の懸念から、腸重積症の好発年齢より早い生後14週6日までの接種開始が推奨されています。
なお、2020年10月から定期接種化されることがすでに決まっていますが、対象は8月以降に生まれたお子さんです。7月までに生まれたお子さんは、任意接種で受けましょう。
子宮頚がん / HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン (サーバリックス、ガーダシル)
子宮頸癌は皮膚や粘膜に接触感染するヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因です。感染は一過性ですが、終世免疫は形成されず、反復して感染します。多くのタイプがあり、一部が性行為を介して子宮頸部に感染し、長期間を経 てそのごく一部が異形成から子宮頸癌となります。最近検診受診率の低い若年者の発生が増えています。
サーバリックスは子宮頸癌のリスクの高い2タイプに、ガーダシルは加えて尖形コンジローマに関わる2タイプにも効果があり、対象は性交渉前の10歳台前半の女子です。近い将来子宮頸癌をかなり減少させる可能性があります。2006年にオーストラリアで開発、既に世界中で承認され、日本でも2009年に発売されました。 2013年度には定期接種化されましたが、「複合性局所疼痛症候群」の発生との関連が問題となり、同年6月から勧奨が中止されたままです。
海外では「関連性は認められない」とされ、他に接種が中止された国はありません。しかし関連性はともかく患者さんにとっては過酷な症状であることなどから、その病因やワクチンとの関連性についての調査、検討が継続中ですが、未だに解決しません。国際的にも、日本の接種中止は重大な問題として取り上げられています。このままでは、将来的減少させられるはずの子宮頸がんの発生が、ワクチン実施国に比べて増加する可能性があります。もちろん現在でも希望者には引き続き定期接種として行うことは可能ですので、ご希望の方はお申し出ください。