堀こどもクリニック

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2020/08/31 小児科待合室の皆さんへ

子どもが熱を出したら?

発熱は最もありふれたこどもの病気の兆候です。たいていはただのカゼですが、やはり高熱でフーフーしているこどもを見ていると、つい不安になってしまうのが親心というものです。
ここでは、こどもが急に熱を出した時に、小児科医の立場からお母さん方に知っておいていただきたいことを整理してみました。

熱とは?

発熱やそれに伴う痛みやだるさは体の異状を知らせる警告であり、感染症などから体を守るための防御反応です。体温が高いほど免疫反応が強く起こることが、いくつもの実験により明らかにされています。その熱だけを解熱剤で下げても病気自体は軽くなりませんし、悪化も防げません。逆に解熱剤で熱を下げなくても、発熱の大部分を占めるカゼなら時期がくれば自然に治ります。「高熱が続いて脳炎にでもなったら…」というのは迷信です。確かに脳炎や髄膜炎は高熱の出る重い病気ですが、高熱が続く結果として起きるわけではありません。

解熱剤の使い方

解熱剤は本来病気を治すために必要のある薬ではありません。しかし、熱の持続により一日中熟睡もできず、飲食もままならない状態が続くことも体力の消耗につながります。山登りにも適度な休息が必要なのと同じように、適切なタイミングで解熱剤を使い、ぐっすり眠ったり、食事が摂れたりできるようにしてあげましょう。

熱が上がりきってから使いましょう

子どもは体温調節中枢の働きが未熟で、急に39~40°Cの高熱になることがよくあります。そんな時に「38.5°Cになったから」とあわてて解熱剤を使ってもあまり効かなかったり、時としてさらに上昇してしまうこともあります。熱の高さだけにとらわれず、解熱剤の使用はなるべく熱が上がりきるまで待ってからにしましょう。また、子どもでは熱があっても比較的元気なこともあります。そのような時には急いで解熱剤を使う必要はありません。しばらく様子を見て、ぐずって泣き出したり、寝つけない様子が続いたら解熱剤を使用しましょう。

子どもに使う解熱剤

子どもの解熱剤には解熱効果の強さより安全性の 高さが重要で、世界的にアセトアミノ フェンという薬が用いられています。(商品名では カロナールドライシロップやアンヒバ座薬、アルピニー座薬など)「使ったのに、あまり下がらず心配」といった問い合わせもありますが、少し下がって多少楽に休めればそれで良いのです。6~8時間くらいはあけて、 1日の 使用回数は2~3回くらいを目安にして下さい。

発熱時の注意点と看護

高熱が出ただけで心配する必要はありません。熱の高さに目を奪われずにそれ以外の症状や全身状態の観察をしっかり行いましょう。

  • 寒気が強く震えているような時には呼んでも返事どころではありません。また40°Cを超えるような高熱の時には寝ていても熟睡できず、夢を見ている時のようにうわごとを言ったり手足を動かしたりすることがありますが、あわてないで下さい。
    解熱剤を使い、少し下がった時に普段の様子に戻れば心配ありません。もし熱が下がっても「トロトロして呼んでも返事が鈍い」「目の動きが乏しい」「意味不明なことを口走る」といった意識障害を疑う状態があれば、なるべく早く受診して下さい。
  • 頭を冷やしたり冷えピタを貼っても、それで熱を吸い取って下げることはできません。無理矢理押しつけたりせず、気持ちよく休めるようなら冷やしてあげて下さい。
    ふとんにくるんで熱いものを与えて汗をかかせよう、などということは小さなお子さんには禁物です。
  • 発熱時には原則として入浴は避けて下さい。汗をかいたらお湯で暖めたタオルで全身をよく拭いて着替えさせて下さい。
    お尻など、部分的には直接シャワーで洗ってもかまいません。
  • 熱に対しては特別な食事の制限はありません。
    消化の良いもの、栄養のあるものがよいのはもちろんですが、冷たいもの、水気のあるものを含めて、お腹をこわさない程度に、本人が欲しがるものを優先して与えましょう。
  • お子さんが熱で具合が悪くグズグズしている時には、優しくいつまでも抱いてあげる、背中や足をさすってあげる、お湯で温めたタオルで汗を拭いたり、ひんやり冷たいタオルを額に当ててあげるなど、少しでも気持ちよく過ごせるよう手助けをしてあげて下さい。

熱を出したら、食べたいだけのアイスクリームと、”いつもより優しいお母さん”という心得は、開業後に知己を得た東京都薬剤師会のOさんからいただきました。
まさに言い得て妙だと思いませんか?

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