堀こどもクリニック

Menu

2020/08/31 アレルギー科待合室の皆さんへ

ここだけの、花粉症の話!  その1

フクジュソウやクロッカスの花が咲き始め、信州でも春の到来を実感し始める3月。でも花粉症の患者さんは、このウキウキするような春をちょっとユーウツな気分で迎えているかもしれません。2月末にはシーズンに入る関東・東海地域のスギ花粉症がテレビのニュース番組で取り上げられるようになると、ぼちぼち長野県でも飛散が始まります。
最近では前年夏の気温等の影響による花芽のつき具合などから、翌年春のスギ花粉飛散量について各地の予報が出るようになり、およその傾向は予想できるようになりました。しかし、実際にシーズンになってからの日々の身近な花粉飛散数は、気温や雨量、風の強さや方向など様々な要因で大きく変動します。
油断していると、思わぬタイミングでひどい症状に見舞われることもありますよ!
ここでは花粉症の治療について、知っておいていただきたい基本的なポイントをまとめてみました。

スギ花粉の顕微鏡写真

薬はいつ飲み始めたら良いか?

長野県では例年3月中旬前後から本格的なスギ花粉症シーズンになります。以前はひどくなり我慢ができなくなると来院する患者さんが多く見られました。
その後新規抗アレルギー薬の開発に伴い、「飛散の1ヶ月前から予防を始めた方が良い」と言われた時期もありましたが、どうもこれには製薬メーカーの思惑も少し絡んでいたかもしれません。個人的は、飛散が始まり、日によって症状を感じるようになったら、「調子の良い日があっても」服用開始をお勧めします。
開花の初期は花粉の数も少なく、風などの条件により日によってわずかな飛散が観測されるようになります。この辺で、多くの患者さんが鼻のムズムズや目のかゆみなどを感じるようになりますが、症状は大したことはありません。
でも、そのくらいのうちに服用を始めて鼻粘膜の炎症を抑えた方が、その後の悪化を防ぎやすいのです。「このくらいならまだ我慢できる…」と油断しているうちに気温の高い日が続いたりすると、開花が急速に進んで花粉量が増え、そこに風の強さや向きなどの条件が加わると突然飛散が増加し、ある日を境に一気にティッシュの箱が手放せず、くしゃみや鼻閉で安眠のできない状態になってしまいます。そうなると薬を飲み始めても止めるのがより難しくなってしまいます。

例年のことです、まもなく始まるという時期になったら早めに薬をもらい、自覚症状を感じ始めたら治療を開始しましょう。
最近はインターネットでリアルタイムの花粉情報も容易にチェックできます。
関東や東海の飛散状況を示すマークが大きくなってきたら、長野県の飛散のマークが小さくても「頃合い」だと考えてください。

長野県佐久地方の花粉カレンダー

一般的な治療薬の選択は?

基本は抗ヒスタミン薬の服用を行います。最近用いられる新しい世代の抗ヒスタミン薬は従来の抗ヒスタミン薬に比べて眠気の少ないのが大きな利点ですが、それでも個々の薬剤により少し差があり、人によっては少し感じる場合があります。

一日一回の服用で済むものと朝晩二回服用するものがあります。一回の方が飲み忘れが少なくてすみますが、二回の方が少し切れ目を感じにくいかも知れません。
個々の薬の選択はご相談ください。時には薬を変更して比べて見て、自分に合った薬を探してみるのも良いでしょう。
鼻炎症状の強い人はステロイド剤の点鼻の併用が有効です。
特に鼻閉症状には抗ヒスタミン薬より確実な効果が期待できます。花粉症のような季節的な使用では全身的な副作用の心配はありません。
難点は内服薬に比べてよく「面倒だ」と言われることですが、最近は夜一回で済むものがありますので、「騙されたと思って」一度試して見てはいかがでしょうか?

結膜炎症状には抗ヒスタミン薬あるいは抗アレルギー薬の点眼を朝晩と外出後など1日4回程度使用します。目が痒くてたまらなずこすって真っ赤になってしまったり、時には白目がブヨブヨに(果物のライチのよう!)なって腫れてしまうこともあります。
このような悪化時はステロイド剤の点眼を一時併用すると早く楽になります。ただしステロイド剤の点眼では眼圧の上昇しやすい人がいることが知られており、使用は急な悪化時に限り、漫然とした連用は避けましょう。

こんな薬もありますよ!

  • 鼻づまりに効くお薬
    みなさんよくご存知の「アレグラ®」という眠気のとても少ない抗ヒスタミン薬に、血管収縮剤という成分を加えた「ディレグラ®」という薬があります。大きめの錠剤で朝晩の空腹時(食後では効果が減弱)に2錠ずつの服用とちょっと不便ですが、鼻閉に対する効果は他の抗ヒスタミン薬に比べて強力です。
    「早くなんとかしてほしい!」といった時に是非ご相談ください。(残念ながら12歳未満の小児への適応はありません。)
  • ツーンという刺激のない点鼻薬
    点鼻薬が好まれない理由は面倒くさいということと、もう一つは噴霧時のツーンとした刺激ですが、例外があります。
    「リノコート®」という粉薬の点鼻薬で、噴霧時の刺激はほとんど感じられません。薬剤を含むヒドロキシプロピルセルロースという基剤が水分を含むとゲル状になり、鼻粘膜に付着してゆっくり薬剤が吸収されるという特殊なお薬で、お子さんでも嫌がらずに使用できます。
    (裏技的な話になりますが、発作的に鼻水が止まらなくなってしまった時に、よく鼻をかんでからこのリノコートを噴霧して5~15分するととても効くことがありますよ!)
  • この時だけはなんとかしたい…という時は!
    試験や卒業式/入学式など大事な行事があり、その時だけはなんとかしたい、という場合には短期のステロイド剤の内服を使用することも可能です。
    使用する薬の種類や期間、服用のタイミングなど、ご相談の内容に応じて対応させていただきます。

お勧めできないお薬も…

  • 血管収縮剤の点鼻
    市販の点鼻薬の多くには血管収縮剤という薬物が含まれています。鼻粘膜の血管の神経に作用して反射的に収縮させて鼻づまりを抑える成分ですが、連用により反動の鼻閉が強くなるという欠点があり、勧められません。
    過量投与により、発汗、徐脈、昏睡等の全身症状があらわれやすいので、小児には使用しないことが望ましく、特に2歳未満の乳・幼児では副作用が強くあらわれ、ショックを起こすことがあるので「禁忌」とされています。
  • ステロイド剤と抗ヒスタミン剤の配合薬(セレスタミン®、セレスターナ®他)
    添付文書等には「アレルギー症状を抑える薬」と記載されているため、それと知らずに「この薬は自分に合っている、とても効く薬だ!」勘違いされている患者さんも見られます。
    しかしこの薬は、ベタメサゾンという強力なステロイド剤の配合薬です。
    たとえ2~3日に一回の服用でも、体内のステロイドホルモンの分泌を持続的に抑え、副作用に繋がりやすいので、漫然とした服用は決してしないでください。

一覧をみる