堀こどもクリニック

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2020/08/31 アレルギー科待合室の皆さんへ

蜂刺されによるアナフィラキシーへの対応! 

10~30回以上の刺傷歴が珍しくない営林署職員ではスズメバチ、アシナガバチのアレルギー抗体陽性者も多く、以前は毎年1~2名の職員が従事中の蜂さされのアナフィラクシーで亡くなっていました。
実は私が佐久総合病院アレルギー科在職中に皮膚科と共同で長野営林局管内の蜂アレルギーの実態調査を行い、その調査結果を元にエピペンの前身にあたるアナキット(エピネフリンと注射器のセット)の国内緊急輸入が初めて承認され、全国の営林署の現場に設置された経緯があります。
その後操作の簡便なエピペンが導入され、林業従事者については平成20年から「林業・木材製造業労働災害防止規程」で抗体検査結果陽性者のエピペンの携帯が努力義務とされ、その後の死亡事故の減少につながっています。
今回の特集では、最近相談される機会が増えている蜂アレルギーとその対応について、専門医の立場から要点をまとめてみました。

アシナガバチによる刺傷

どのようなことがあったら注意が必要か?

スズメバチに多数刺されたりしない限り、初めて刺されて全身症状がでる可能性はありません。アレルギー反応は複数回刺されることにより感作が成立し、その後の刺傷時に発生します。
原理的には2回目以降となりますが、実際上は2~3回目の刺傷で発症することはそれほどありませんので、刺された回数が少なく、過去に全身症状の既往のない方は次項の対処で様子を見て下さい。
小さなお子さんはほとんどこの場合に該当します。
私の長い臨床経験の中で、小児で蜂に刺されて全身症状を呈した例は片手で数えられる数しかありません。

通常の蜂刺されでは、刺傷部の限局した発赤と痛みは時間とともに改善しますが、半日位してからだんだん赤く腫れが広がってくることがあります。この「大きな局所反応」自体は48時間くらいを過ぎると改善するので心配はありませんが、時としてその後の刺傷時の全身症状につながる可能性が指摘されています。
このような、刺されて1~2日後になって大きく腫れるような反応が見られた方は抗体検査を受け、結果により必要な指導を受けた方がよいでしょう。

刺傷歴のある方で、刺されて30分以内に刺傷部の局所反応以外に、全身のかゆみや蕁麻疹、息苦しさ、めまいやふらつきなど何らかの全身症状を起こしたことのある方は、抗体検査を受け、エピペンの携帯や刺傷時の対処について十分な指導を受けて下さい。

刺傷時の対処(全身症状の既往のない場合)

  • その場から離れる
    他にも仲間の蜂がいるかもしれません。まず落ち着いてゆっくりその場から数十メートル離れましょう。
  • 毒を取り除く
    原則として口で吸出すことは避けましょう。
    野外に出る機会の多い方は、繰返し使用可能な市販の吸引器(ポイゾンリムーバー等、amazon等で入手可)を携行しておき、速やかに使用しましょう。
    針が刺さったままになることもありますが、その場合には毒嚢が収縮しないよう、指先でつまんだりせず、爪で弾いたり、カード状のもので横に払ったりして取り除きましょう。
  • 局所を冷やす
    冷水(流水)や保冷剤など手近にあるものでしばらく冷やしましょう。
  • 安静と観察
    アナフィラキシー等の全身症状は早ければ数分で発症します。
    30~60分様子を見て何もなければ大丈夫でしょう。

刺傷時の対処(全身症状の既往あり、または、アレルギー抗体陽性の場合)

  • 受傷直後は、上記の対処を速やかに行って下さい。
    刺されたのが四肢であれば、受傷部より体に近い方を軽く縛り、時々緩めながら続けて下さい。
    その上で、同行者がいれば手を貸してもらい、自力歩行は最小限に、病院に向かうべく車に移動をして下さい。
    車についたら、同行者の運転ですぐに最も近い病院に向かって下さい。
  • この間、同行者がいる限り単独行動は避け、決して「まだ大丈夫だから」と症状が出るまで様子を見たりしないで下さい。アナフィラキシー・ショックでは極めて短時間で意識を失い、数分の差が生死を分けることもあります。
  • 何らかの全身症状の兆候があれば、たとえ車中であっても救急車の要請をして下さい。
    過去にアナフィラキシーショックの既往のある方は、受傷の時点で即要請をした方がよいでしょう。

エピペン使用のタイミングと使用後の注意点

  • 日本小アレルギー学会の「一般向けエピペンの適応」にアナフィラキシーショックを疑いエピペンを使用する目安(持続する強い腹痛や嘔吐、咳き込みや息苦しさ・絞扼感、ぐったりして意識が遠のくなど)が明記されましたが、蜂刺されではより早いタイミングで使用しないと間に合わない可能性があります。
    エピペンを携行している場合には、たとえ軽微でも何らかの全身症状の兆候を認めたら速やかに使用して下さい。特に、過去に全身症状の既往のある方では異変を感じた時点で迷わず使用して下さい。
  • エピペンを使用した後、もし全身症状が進展しなかったり、結果的に軽度ですんだ場合でも、かならず病院を受診して必要な治療や指導を受けて下さい。
    アナフィラキシーの一部では8~12時間後に遅発性の反応が起きることがあり油断はできません。また、使用済みのエピペンも破棄したりせず必ず持参して下さい。

まずは、ハチに刺されないよう!

  • 山や森に行く時には 肌の露出を避け、長袖、長ズボンや靴下の着用を忘れずに。
    特にスズメバチは黒い色に攻撃性を見せることが多いので、なるべく白やそれに近い明るい服装にしましょう。
    蜂が寄ってきやすい花柄やヒラヒラした服も避けましょう。
  • 空き缶の残液を餌にしているスズメバチが缶の縁にとまったり、中に入り込んだりすることもあり、気づかずに口唇等を刺されることがあります。
    放置された空き缶に触れたり、休憩時に飲みかけの空き缶を置き放しにしないよう。
  • ヘアスプレーや香水など化粧品には警報フェロモンの成分が含まれているため、野外の活動ではなるべく使用を控えましょう。
  • 蜂は動きの遅い物や静止している物は判別しにくく、手や枝を振ったり体を左右にひねる動作に敏感に反応します。
    また蜂の目は前方や上方はよく見えますが下方は見えにくいので、近くに蜂が寄ってきたらかがんで姿勢を低くし、なるべく静かにゆっくりとその場を離れましょう。

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