2021/01/08 子どもと新型コロナウイルス感染症
小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見アップデートとインフルエンザ流行状況
小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見(2)
ホームページ開設時にアップしたまとめから4ヶ月が経過しました。その後の第二波から現在の第三波へと感染の拡大に伴い新型コロナについての知見も積み重ねられ、11月11日に日本小児科学会から第二報が公表されました。これを中心に、最近の知見をまとめてみました。
- 小児の患者数は成人と比べると少ないが、感染が拡大するにつれその割合が増 えてきた。(日本国内では5月3日の時点で10歳未満が1.6%、10~19歳が2.3%だった 。しかし次第に小児の割合が増えて来ており、10月7日の時点で10歳未満の患者総数は2,112人 (2.4%)、10~19 歳では4,399人 (5.1%) と報告されている。)
- 学校や保育所におけるクラスターの発生も報告されるようになったが、社会全 体から見ると依然として多くはない。日本小児科学会の任意登録によるデータベースでは、先行感染者がはっきりした例の8割が家族内感染、保育園/幼稚園や学校関係者は合計しても1割強となっており、小児COVID-19症例の多くは家族からの感染である。
- 小児の感受性(感染しやすさ)については様々な報告が出てきたが、成人と比べると感染しにくい可能性が示唆されている。
- 小児の感染力が成人より強いかについては、まだ結論が出 ていない。
- 小児においても嗅覚・味覚障害が報告されているので、訴えを確認できる年齢のお子さんについては留意すること。
- 小児の重症例は、感染例が増加した現在でも引き続き極めて稀である。
- COVID-19罹患妊婦は、重症例は少ないものの、妊娠していない女性よりも集中管理が必要となる可能性が高く、早産率も高いことが示されたが、垂直感染は稀である。
- 母子感染は極めて稀であり、母子同室や直接母乳哺育であっても児への影響が認められていないとの報告がある。
- 学校閉鎖による流行阻止効果の報告も取り上げられたが、実際には学校閉鎖と同時に複数の感染予防策を行っているため、学校閉鎖単独の効果は示されていない 。
以上のように、幸いなところ子どもの新型コロナウイルス感染症に関する知見は夏までと大きな変化は見られていません。当クリニックでは、引き続きご家族の健康状態や地域の発生状況に最大限の注意を払いつつ診療を行います。
なお、イギリスからの変異株についての報告では感染力が高いことと合わせて、子どもも大人と同様に感染しやすい可能性があるという指摘があり、小児科医としては気がかりです。ただしそれを裏付ける正確なデータはまだありませんので、慌てず今後の調査を待ちたいと思います。
令和2年12月末現在のインフルエンザ流行状況
新型コロナとの同時流行が懸念されていたインフルエンザですが、幸い年末まではほとんど発生していません。
12月14日から20日までの1週間の全国の患者報告数(定点医療機関約5000カ所)は、24都府県から計70人の報告がありました。全国の半数の都道府県でゼロ、前年同期と比べて10万5151人少なく、前年比0.1%未満でした。学級・学年閉鎖、休校となった施設(保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校)についても、前年同期は3340施設でしたが、この週はゼロでした。4月半ばから限定的に小学校などを再開している欧州でも、学校を介した感染拡大の兆候は見られていません。
昨シーズンは12月にはすでに流行拡大期に入っていましたが、年によっては1月以降に本格的な流行が始まることもありますので、まだ当分注意は必要です。でも、すでにシーズンの終わった南半球ではやはり流行はほぼゼロレベルでしたので、このままコロナに集中できる状況が続くことを願っています。
なお当クリニックでは、成人の発熱者に対して、インフルエンザの地域的な発生の見られない現在は新型コロナのPCR単独の検査を行っています。一方で、もし地域内で今後インフルエンザの発生を認めた場合には、一回の採取で同時にインフルエンザと新型コロナの抗原検査ができる検査キットをいつでも使えるよう準備してあります。
最後に、流行による免疫の強化がなくなる分、数年後になってコロナの代わりにインフルエンザの大流行が起きないかも心配です。たとえ流行がなくても毎年ワクチン接種を行い、その先に備えておくことも必要ではないかと思います。